Q.
「死ぬまでに観るべき映画」とか、「一生に一度は読むべき本」などと、よく言われることがありますが、観るべき映画や読むべき本としてお薦めのものがあれば、教えて下さい。
A.
映画を観ることで人生のたいていのことは学ぶことができる、と語った人がいます。それほどまでに映画には、私たちの人生とは何なのか、生きることの意味は何であり、死とは何なのか、愛とは、信頼とは、正義とは、そして、善悪とは、などの根本的な命題に対する何らかの答えが散りばめられているのでしょう。
「読む時間を取っておきなさい、それは知恵の泉である」という言葉があります。また、ドイツのことわざに「読書は楽園から湧き出る泉であり、地を潤す」というものがあります。良書との出会いにより、私たちの人生は潤され、私たちの知性は開花させられ、啓発させられるからでしょう。
映画を鑑賞したり、読書にふけることで、私たちは人生において最も大切なものと出会うことができ、何よりも貴いものを探し出すことができるのかもしれません。それは、まるで人生を豊かにするための宝探しのようなものです。ですから、映画の鑑賞に時間を費やし、読書に没頭する時間を惜しまないことは、とても素晴らしいことだと思います。
では、どんな映画を観るべきなのか、どのような本を読むべきなのか、そのことについてはいろいろと意見があるでしょう。例えば、「死ぬまでに観るべき映画」として紹介されている映画を観るのもいいでしょうし、傑作・名作と呼ばれている映画に焦点を当てて鑑賞するのもいいでしょう。読書についても、まずは古今東西を問わず名著と呼ばれるものから始めることもできますし、文学全集などのようにまとまったものから読み始めるというのも一つの方法です。
ただ、ここで一つだけ私たちが忘れてはならないことがあります。どんな映画を観賞しようとも、どんな本を読むにしても、それらの目的がどこにあるのかということです。時間つぶしや娯楽のために映画を鑑賞したり、暇を持て余して読書するだけなら、それらの時間は私たちの人生に果たして有益なものとなるでしょうか。
私たちは何をするにつけても忘れてはならないことがあるのです。それは、すべてのことは私たちが幸福になるために、そして、人格を完成させるためにあるということです。人生をより豊かなものにするために、人生におけるさまざまな疑問に対する答えに出会うために、そして、より素晴らしい人生とするための道標を見つけるために、私たちは映画を観るべきであり、本を読むべきなのです。ロシアの文豪トルストイは「すべての書を完璧に読む必要はない。心にわき起こる疑問に答えられるように読まねばならない」と語っています。
そこで、是非とも薦めておきたい映画と本について紹介させていただきます。まず、映画ですが、洋画であれば、「ベン・ハー」(1959年)、「シンドラーのリスト」(1994年)、「セブン」(1996年)、「タイタニック」(1997年)、「ライフ・イズ・ビューティフル」(1997年)、「シックス・センス」(1999年)、「グリーンマイル」(2000年)、「コンスタンティン」(2004年)、「ミリオンダラー・ベイビー」(2004年)、「グラン・トリノ」(2008年)などで、邦画では、「羅生門」(1950年)、「二百三高地」(1980年)、「乱」(1985年)、「アルキメデスの大戦」(2019年)です。
次に読むべき本では絶対的に必読の書は、「聖書」、「古事記」、「日本書紀」であり、これらの本に関係する書籍もぜひ読んでもらいたいです。それは解説本であっても、あらすじをまとめたものであっても構いません。「聖書」を通して世界の真実が見えてくるでしょうし、「古事記」や「日本書紀」を読むことで真の日本が見えてきます。その上で、お薦めしたいのは、著作そのものではなく、次の著者による本を是非とも読んで欲しいです。シェークスピア、ダンテ、ゲーテ、トルストイ、ドストエフスキー、そして、芥川龍之介と夏目漱石です。
もしも、私たちが人生をより豊かなものにするために、映画を通して何らかの教訓を得ようとし、読書を通して人生の意味を深く悟ろうとするならば、私たちは昨日よりは今日、今日よりも明日、少しずつであっても成長し続け、確実に完成へと近づいていけるはずなのです。このことを決して忘れることなく、映画を楽しみ、読書に喜びを見出すことができたらと願っています。